総括施設長 藤木 充
「どうだんつつじ」と福祉の原点
秋に見事な紅葉を見せる「どうだんつつじ」(灯台躑躅)がもっと華麗に咲き誇るのが5月の初旬。結び灯台(3本の棒を結び、上に油皿を置いて灯火をともす道具)に似た白い可憐な花がステップ広場ガルのグランドに至るスロープの斜面一帯に咲き誇ります。
ガルの創設時、南郷のこの地に根付くようにとの願いを込めて植えられた「どうだんつつじ」が、今は力強く華麗にそして可憐に根付いています。
68年前(1946年)糸賀一雄・田村一二・池田太郎により「南郷」の地に近江学園が創設されました。以来「南郷」は滋賀県の知的障碍者福祉の原点の地となりました。教育と医療、福祉支援が混然一体となってすべての子に「発達を保証する」という羅針盤のもと軽度の知的障碍の方だけでなく「重症心身障碍」から「自閉症行動障碍」の人たちまでの処遇を進めるという、その意味で他に類を見ない先駆的施設であった近江学園。様々に人材を生み出し、全国にその支援の枝を広げていった。「地域での就労」では、池田太郎により信楽の地に「信楽学園・青年寮」が建てられ、地域全体で障碍者の暮らしを支援する、「地域に紛れ、消えゆく施設」が構想実施され、今も多くの一般事業所に障碍者の姿があります。他方「重症心身障碍」や「自閉症行動障碍」の処遇については、岡崎英彦により「重症心身障碍」を中心として処遇する「第一びわこ学園」と「自閉症行動障碍」も対象とした「第二びわこ学園」が創設されました。これ以降多くの施設が障碍者支援として、先人の想いを引き継ぎ、新たな処遇を切り開いてきました。
私たち、しが夢翔会も「ステップ広場ガル」「一里山地域支援センター」「北部複合センター」の活動を通して「重症心身障碍」自閉症行動障碍」の人たちへの支援を行うことで、近江学園の流れを受け継ぎ、滋賀県の、大津市の障碍者支援に寄与したいと願ってきました。
新たに開設した「家族支援センター」や「自閉・行動障碍対象の通園事業所・いちばん星」「自閉症行動障碍サポートセンター」はこれまでの経験を生かし、対象とする視点を障碍者を取り囲む家族や地域の支援環境などに広げることとしました。
本人を取り囲む重要な環境である家族に注目し、「家族・親族後見」実施についての支援や、家族の持つ家族としての様々な困りごとに向き合う専門スタッフを配置する「家族支援センター」は、これからの法人後見の在り方も含め、地域における重要な支援の一つになるものであると考えています。
自閉症行動障碍に向けた入所・通所(いちばん星)・短期利用等を通じた総合支援を実施すること。その上に、地域で暮らし作業所等に通う自閉症行動障碍を持つ人に向けた支援として、作業所等へのスーパーバイズを継続的に実施することを目指す自閉症行動障碍サポートセンター」を配置しました。
これらのすべては「南郷」の地に「近江学園」により切り開かれた「滋賀」の障碍者福祉の精華として私たちに与えられたものであり、これからも大切に育てることを求められているものであるとおもいます。
しが夢翔会が実践の道標としてきた「生活の主人公」—障碍者市民が生活の主人公であること】 【「ひとりももれなく」—大津の支援を必要とする障碍者市民へ支援を届けること】が実現できるよう、事業を進めていこうと考えています。