しが夢翔会 総括施設長
藤木 充
現場主義であること「障碍者のための事業である」を実践するために
「集団の中で子どもは発達する」という羅針盤のもと、乳児検診による早期発見から一人一人の発達課題にもっとも適切な進路を考え各機関で実践していく取り組み—一人へ向けて様々な機関・事業所が力を合わせて支えること。そんな「大津方式」の黎明から30年を超えました。ガルの開所から15年を超えました。しが夢翔会の設立からの「視点」は、障碍者が主人公であること、大津市民の財産ー大津の障碍者全体への事業であることです。「ねがい」は障碍を持つ人が「その人らしく」豊かに暮らすこと。これらの実現に向けて、ショートを広げ、地域支援(ヘルプや相談支援、デイなど)を開始し、ホームもいくつかを展開し、重症心身障碍の人の通所を始めました。
1)現場主義—『本人中心』であること
私たちの実践は現場主義—「本人中心」です。一人ひとりに必要な支援が必要な形で届くように。たくさんの人の目に「ガル」はどんな形に映っているのでしょう。しが夢翔会の嫌いなところはどこでしょう。期待も批判も、これからの私たちの実践の「道標」です。 たくさんの思いがお互いの気持ちの大事なところに届く。そんな「ガル」でありたいと思います。
職員の育ちは、実際の現場での利用者とのかかわりの中でこそ、あるのだということ。しかしそのためには、さまざまな状況を受け止める度量を必要とします。そしてその度量は、個人の生活も含め、さまざまな経験こそがその基礎となります。
うちの子を見てくれる人を固定してほしい、という親の気持ちにも配慮した上で、きちんと見ることのできる職員総体となること。それは、個別の利用者との関係でつみあがり整理され、集団としての目標が課題として管理される状況なのだと思います。
事故をなくすこと。目標ではありますが、怪我もあります。対応の不十分さが、これまで、さまざまな暮らしの中で差別や生きることの困難さに押しつぶされてきた利用者・家族にとっていたたまれない状況を生んでしまうことも。一つ一つの事柄を、丁寧に検証し、引継ぎ、積み上げていく作業を続けなければなりません。このことにゴールはありません。これからも引き続き、心を引き締めて実践に当たらねばなりません。
そして、やっと、しんどいことを真正面から取り組んできた私たちの実践が、具体的な結果となってこようとしています。自立支援法は、個別負担に致命的な欠陥を持っていますが、相談支援中心、日中夜間の取り組みの評価など、これからの福祉の状況を切り開く基礎となるものも多く提示されています(提示の中身がとてもお粗末ではありますが)。 これからも、しんどいことから目を離さず、必要なことに真摯に取り組む私たちでありたいと考えています。
2)どういう実践をするのか
新しい『理念』の中に 【職員の仕事に対する姿勢と心構え】 があります。
その中で、職員としての姿勢をあげています。
心に留めて、仕事を進めていただければと思います。
わたしたちは、援助者として、利用者の人間としての尊厳を尊重します。
1)利用者の基本的人権を守ります。
○性に配慮した取り組みをします。
○精神的・身体的苦痛をあたえる・暴力・体罰は行わない。
またそれを容認しない。
○障がいの状態・行動・性格で差別しない。またそれを容認しない。
○利用者の年齢やライフステージにふさわしい呼び方・接し方・
関わり方を工夫する。
2)利用者のプライバシーの保護・秘密保持に配慮した支援をします。
3)利用者が社会生活上の知識・文化的刺激を受けとめられるよう
積極的に生活を支援します。
4)利用者が地域社会の住民として、地域社会との結びつきができるよう、
地域の理解と共感が得られるよう努力します。
5)利用者が暮らしの中で、様々に選択できるための経験をつみ、
自己決定のための力をはぐくみ、自ら決定したことを尊重するよう努力します。
『この子らは、どんなに重い障碍を持っていても、だれととりかえることもできない個性的な自己実現をしているものなのである ・・・その自己実現こそが創造であり、生産である。私たちのねがいは、重症な障碍をもったこの子たちも、立派な生産者であるということを、認めあえる社会をつくろうということである 「この子らに世の光を」あててやろうというあわれみの政策を求めているのではなく、この子らが自ら輝く素材そのものであるから、いよいよみがきをかけて輝かそうというのである 「この子らを世の光に」である 』
「福祉の思想」糸賀一雄